2013年1月30日水曜日

イギリス・イベント・レポ


ー こんばんは。こないだはお疲れさまでした
ゆ お疲れさまでした
ー 今日はなんか、先日の流れで1対1でお話をお伺いできればと思って。お時間頂いてありがとうございます。よろしくお願いします
ゆ よろしくお願いします。もう録っていきますか?
ー もう録ってます
ゆ これ(レコーダー)イイですね
ー ありがとうございますでは早速ブログのことなんですけど、昨年「とんこつ」ブログを美人画家の市場さんとGovernment Alphaの吉田さんと立ち上げましたよね。面白く拝見させていただいてます
ゆ ありがとうございます
ー 個性的ですよね
ゆ 私以外の2人が、はい
ー いやいや、ブログが全体的に
ゆ ありがとうございます。私は大したことしていないんですけど...
ー で、今日のインタビューは、ゆうこりんさんがまだ一度もアップしていない個人ページに載せられることになっています
ゆ え(笑)でも個人ページをまだアップしていないのは私だけで...書こう書こうと思いながら、まだやれてなくて
ー 実は今日の録音は外部からの圧力がありましてですね
ゆ やっぱり(笑)見当は付いてますけど(笑)
ー いつもあまり話さないゆうこりんさんのロングインタビューってことで(笑)
ゆ 私喋るの下手で...最初モデレーターをやってっていう話もあったんですけど、いつのまにか存在自体が危うい感じになってます
ー 文字起こし役
ゆ かろうじて(笑)でも外部の圧力って...負担にならない範囲でやったほうがいいですよ。引っ越しの手伝いとかに呼ばれても断っていいと思いますよ(笑)
ー 気をつけます(笑)じゃ、ぼちぼち始めましょう
ゆ はい
ー ゆうこりんさんは昨年末にイギリスに行かれていたとお伺いしたんですが、今日はその話を聞かせていただこうと思ってます
ゆ はい。去年の11月30日から12月2日までの3日間、ブリストルで開催された音楽イベントを見に行ってきました
ー お仕事でですか?
ゆ いえ、プライベートです
ー 誰かと一緒に行かれたんですか?
ゆ 行きと帰りは一人でしたが、アーティストや友人と現地で合流しました
ー そのためだけに渡英?
ゆ はい。エクスキューズというか、自分自身を説得できるような好条件が重なったので、行っちゃおう!と思って...
ー へぇ、プラスの点を重ねていったらそうなった、と
ゆ はい。でも英語圏への入国は約20年ぶりだったので、行く前は不安と緊張ですっごい胃が痛くて。飛行機の中のトイレでもラザニアを戻しちゃって、トマトソースでジャクソンポロクっちゃいました
ー またまた大げさな(笑)
ゆ 今思えば、一人で密かにアクショニスト?みたいな
ー それむなしすぎますよ(笑)でも緊張するように見えませんけどね
ゆ 顔だけです。産道を出た瞬間から
ー 出て来たばっかなのに悟り顔みたいな?いやいや(笑)
ゆ ははは
ー で、どんなイベントだったんですか?
ゆ 「Extreme Rituals: A Schimpfluch Carnival(エクストリーム・リチュアルズ:ア・シンプフルック・カーニバル)」っていって、Schimpfluchの活動をなぞりながらお祝いするようなイベントでした。
 
Schimpfluchアウトサイダー精神を持ったアーティストたちと、音やヴィジュアル作品によって汚染された世代のためのプラットフォームとしてルドルフ・エバーが1987年にチューリッヒで立ち上げた。その後徐々にシンプフルック・グルッペというアート集団が生成され、音響アート、アクショニズム、雑音派、パフォーマンス、ミュージック・コンクレート、絵画、インスタレーションなどを行ってきた。1991年にはスイスのグラインドコア・バンドFear Of Godのメインメンバーとして活躍したデイヴ・フィリップスが加入。HPによると現メンバーは他にジョーク・ランツ、マーク・ゼイエ、ダニエル・レーベンブリュック。

ー すっごいダークなものを感じるんですケド(笑)こういうのが好きなんですか?
ゆ 好きというか、いや好きなんですけど、好きっていうと照れるので、”惹かれてる”って感じですかね。こういう音楽を聴き始めたのは30を余裕で過ぎてからなんですけど、市場さんや吉田さんには「病んでる」って。でもそうすると私の周りには超弩級の病み師がうようよしてるってことになっちゃうんで(笑)私はいつも宇宙と繋がっているし、正常ど真ん中ですよ。昨日は太陽系以外の...
ー 家でもノイズ聴いてるんですか?
ゆ はい?(*・▽・*)
ー あ、すみません。 家でもノイズ聴いてるんですか?
ゆ 最近はそうでもなくて、リアーナやマーラーなんかをよくかけています
ー え、リアーナとマーラーっすか...マーラーって最近のDJとかじゃなくて??
ゆ え、最近のDJでマーラーって人いるんですか?!
ー いや知らないですけど(笑)




















ー じゃまたノイズの話で...30過ぎてノイズに出会ってしまったと
ゆ はい...なのでその界隈にいる誰よりも知らないことが多いです。聴いたことがなくて聴きたいアーティストとかアルバムがありすぎて、たまにストレスで、やっと手に入れたそれ系の割と貴重な雑誌を手でビーッて破ったり、洗面所で燃やしたりして、自分がその本とかアーティストの存在を知らなかった状態のところまでもって行くことありますよ。SF的な記憶書き換えまではさすがに無理ですけどね(笑)
ー 本を燃やすとか...追い詰めますね
ゆ 火って綺麗〜とか思って。火星の...
ー か...
ゆ はい?
ー カ...ゲキなストレス解消法ですね
ゆ そうでしょうか?人生は破壊と再生の繰り返しですからね...失ったらまた築くしかないですよね。こういう本に限っては、”落札”ですけどドゥフフ
ー 落札行為自体は違うけど(笑)中身を読んでってことですよね
ゆ ノイズも機材の組合わせを壊して違うルートで繋ぎ直すんですよね。私の場合試行錯誤に時間が掛かるので、途中でもうかなり疲れてしまう。あとやっぱり壊すの怖かったりします。なんでも
ー ゆうこりんさんノイズやるんですか?
ゆ たまに...自宅で気が向いたら。スタジオもあんまり行かないです
ー そうなんですね。でもやっぱりその、3日間のイベントのためだけに海外に行くってすごくないですか?
ゆ 全然そんなことないです
ー はあ。でも私の知り合いにも、高齢すぎるオーケストラ指揮者が来日しないから、こっちから見に行くっていう人はいますわ
ゆ 私は「地球上に私みたいなのが存在してたっていいんじゃないかしら?」って思っているので、少しは生き易く出来てるのかもしれないです、この世の中
ー 30過ぎてノイズに開眼するような人間が存在してても、いいんじゃないって?
ゆ まあ(笑)しょうもない私みたいな人間でも片隅に砂ツブみたいな感じで居ていいんじゃないの?って。でもあくまでも常識の範囲内でですよ
ー  じゃないと大きな困ったちゃん(笑)さじ加減が大事、と
ゆ そうそう。あとは、やっぱりニューロン発火させまくれるライブは最高ですよ。エレクトしますからね。私持ってないけど(笑)
ー はははは ((´ω`υ))ドウシヨウ



エルギン・マーブル@大英博物館






ー では一日目から順にお伺いしたいと思いますが、どのライブが印象に残っていますか?
ゆ すごく難しいんですけど...全部好きなタイプだったので。でもじゃあ...イギリス行きを決めた理由の一つだったザ・ニュー・ブロッケーダーズですかね。また見たいです。あともう一つの理由だった日本ノイズ界の財産非常階段のJunkoさんとルドルフ・エバーのコラボ。感動しました。

{おまけのメモ}
Day1
オープニングはロシアからのトリオ。低音倍音で唱えられるチベット仏教の念仏をベースとする声明と鐘の音。シャーマン的儀式で場に磁力が生じて結界が張られたよう。単調な繰り返しの末に展開。左脳が考えることを忘れる濃厚な丑三つ時ドローン。 
二人がお互いの服を糸で縫い合わせる。その後舞台下に降りて一人が詩を読み、一人が床に敷かれた紙に詩を書き留める。また壇上に戻り一人は椅子の上でのたうち回り、一人は時計状に置かれた空の牛乳瓶に牛乳がこぼれてなくなるまで注いでいった。終始インテンスな集中力。
GXが生成するウォールノイズとTNBの同時多発アクションによる具体音。ストイックなノコギリ男以外は極めてノンシャラン。ある一点まで一定の周波数帯域を超えることがなかった滝のごとき轟音だったがノコギリ男がアルミバケツの蓋で突如ダクトをマッドにぶっ叩き始めた瞬間破壊の音が散りそれまで持続していた”次の1秒も前の1秒と同じ”世界は変転。壇上から何かが飛んでくるかもしれないと身構えた。実際蓋が観客の頭上を超えて飛んで行った。
彼が軋むような音が響く漆黒の会場を歩き回る。2階席から無数の風船が無音で落下してきてフラッシュライトの極端な明滅の中人々は足で風船を割りだした。破裂音が会場中でランダムに鳴る。身動きが取れない。後半彼はステージで身体に直結したサウンドを繰り出し始めたが直結するが故にホラー的ダークな音は紛れもなく彼であり、ナイスガイの別の面を見た。
後ろ足だけで吊るされた豚が麻酔なしでナイフで切り込みを入れられ体がビクビク痙攣する中、素手で内蔵が抉り出され結び目が作られる...目を背けたくなる映像。生体の限界の限界までいたぶられる動物と、人間の声と気息の極端な形態=絶叫の激烈なセット。
黒髪ロングのカツラx上半身裸のルドルフと黒ワンピxピンヒールx網タイツのJunkoの登場に会場は色めき立った。だがマイクの前に立つ可憐な妖精と絶叫のギャップと言ったら...。速度を内包した鋭い声は吹き抜けの天井を突破。ルドルフの操作によって彼女の音源やピアノの音が幾重にも重ねられていき彼女の肉声もその渦にまみれていった。胸に込み上げてくるものがあって心が嗚咽した。




Rudolf x Junko



ー はい!ありがとうございました。ではすぐ2日目に行きましょう
ゆ はい。イベントのタイトルにもありますが<儀式>という色が濃かったルドルフのRunzelstirn & Gurgelstøckですかね。でも儀式なんだけどダークともネガティブとも思わなくて...核みたいなものがあるのを感じたというか

{おまけのメモ}
Day2
(途中から鑑賞)ラップトップからの光だけで浮かび上がる現役の電子音楽の作曲家は、その頃の空気を会場に連れて来た。でも苦手意識があってポイントがつかめないまま終わってしまってもの凄く悔しい。
Vicky Langan (Wölflinge)
ほぼ全裸の男女が赤い照明の下に。男性が椅子に座った女性にキスを試みたりとちょっかいを出し始めるが女性は抵抗。男性はやめない。二人とも床になだれ込んで子ども同士やりとりのようにくんずほぐれつし始めた。
バッハ無伴奏チェロ演奏での優雅な幕開けも、群れで現れたスネア太鼓隊が主役を奪還。ステージ上では大ボスが野球バットを全力で振り回し、マイクを通さない生の豪快な破壊音が炸裂。太鼓隊は次第に強く恍惚の太鼓を叩いてトランス状態へと誘導。ハレ。十数個のトイレ紙ロールがプロレスリングへの紙テープのように宙に舞い、歓声と共にケイオス極まる。
みんみん蝉の鳴き声のように加工された彼の声が大音量で幾重にも放出され、ぐんぐん攻めてくるような前のめり型の音は日本のノイズに似た情動を生んだ。直立不動で鑑賞するパフォーマンスが大半な中、彼のライブでは熱狂的に踊る人が。
厳かに始まる。声に抑揚を付けながら彼の個人的出来事を吐露していく。傍らではコントラバスが音を鳴した。観客はじわじわと彼の世界に入り共有を始めたが、幕切れは突然に。それがまた格好良くて会場は湧いた。
Runzelstirn & Gurgelstøck
右手に何かのギアを装着し強く深く呼吸をする姿はまるで巨石を念力で動かそうとしている若き長老。ウォールノイズの源が不明だがそのギアに違いない。脇では酢が沸騰していて嗅覚も刺激される。かなり臭い。下からライトに照らされながら、先端に山羊の角が沢山ついた棒を両手で持って巫女のようにしゃんと振り始めた。声を発せずとも見える内側の熱。




Runzelstirn & Gurgelstøck




ー はいはい、ありがとうございました。では最終日お願いします
ゆ あ、え、はい。この日は全部見られなくて残念だったんですけど、見た中では'Wellenfeld'ですね。4人の人間の脳波が可聴域に調整されたのを爆音で聴きました

{おまけのメモ}
Day3
Dave Phillips (field recording set)
(所用で会場外。動画のUPを待ちます)
(途中から鑑賞)研究室に住む科学者のような風情。紙一枚を手に持った彼は吃音に似た音響詩をノンストップで最後まで情熱的に吐き出し続けた。イタリア未来派を思い起こした。
初期からシンプフルックに関わる。フィールドレコーディングで撮った音を加工し、堅い鉛筆削りのレバーを回すようなイレギュラーなサウンドに構築。感情を排するような音の中に
柔らかい響き。自然が絡んでいる。
女性も男性も上半身裸で向き合って立っている。交互に相手にタッチ。怒って強く叩いたり愛情深くさすったり。男女間の感情がその約15分の間に凝縮されたような。直(じか)、生(なま)、一義の威力。
(所用で会場外。動画のUPを待ちます) 
(所用で会場外。動画のUPを待ちます)
Rashad Becker
(途中から鑑賞)有能マスタリングエンジニアとして知られる彼はイベントのPAを担当。この日はミュージシャンとしても登場。記憶があいまいだが、全てのラインナップ中で唯一DJ的レギュラーなリズムを。彼はこのイベント後に来日し、ドミューンでギターを工具で弄り倒した重厚ドローンを。
GX Juppiter-Larsen, Rudolf Eb.er, Mike Dando, Joke Lanz present 'Wellenfeld - In Memory of Urs Schwaller'
GX のブログから以下転載:
シンプフルッ ク・カーニバルのトリであるWellenfeld(wave field)のテーマは、パフォーマンスついて考えながらパフォーマンスすること。ステージに並べられた椅子に座って脳波を増幅させられているのは、GX ジュピター・ラーセン、ジョーク・ランツ、ルドルフ・エバー、マイク・ダンドー。脳波はワイヤレスの記録センサーを通じてステージ外のPCへ送られ、ミック・グリエソンによって開発された音波処理パッチがデータ・ストリームをオーディオ・シグナルに変換した。ステージ外でミックスを担当したのは、ラシャッド・ベッカーで、受取ったシグナルを広範囲周波数のビープ音、衝撃音、うなりでもって落ち着きを失った観客の精神をさらに追い込んだ。
---
まんじりともしない人。痙攣的動きの人。それぞれが独自の方法で内的領域に沈降。そして4波の脳波は音に姿を変えて体外へ引き出され、観客の鼓膜から脳へと怒濤のように流れ込んで行った。今まさに起こっているライヴな波長。脳波の総体は強烈で、音圧が胃の辺りに来て気持ち悪くなるほどだったが、脳のほうでは快感物質がじわり。同期。




'Wellenfeld'





ー ありがとうございました。インタビューお疲れさまでした!!!!!!
ゆ お疲れさまでした。なんか"ー"さんのコメントが後半から全然なくなりましたよね?
ー そんなことないですよ
ゆ 淡々っていうか早く終わりにしたいみたいな印象を受けたんですけど
ー なんかものすごい疲れました
ゆ ・゜・(ノω;`)・゜・これは誰が文字起こしやるんですか?
ー 何も聞いてないです
ゆ ・・・。
ー 一人二役って大変ですね
ゆ そうっすね
ー じゃこの辺で...



インタビュアー:妄想ゆうこりん
ゆうこりん:妄想ゆうこりん
モノは捨てられないタイプです




イベントが終わり各国に散ったエクストリーム・リチュアラーたちですが、
共有した波長が今でも幽かに同期しているような気がすることがあります





ブリストル行きの車窓から






Special thanks goes to: 
Hiroko & Michel Pennec
Junko-san
Mikawa-san





Extreme Ritualsのライブ動画は、
mojuvideoさんによって今後徐々にupされてゆきます。
興味のある方はチェックしてみてください。
ライブの写真はこちらへupしています(flickr)。





Thank you for reading till the end.


F I N