メジャーの扉を自分で勝手に開くとメジャーになるっていう
市:結局人間て自分の思想とかあるけど、銭が介入してくると『まあね』ってなっちゃうとこあるよね。1万~2万円で話をしているところ突然1千万っていう話が来たら「え? えっ?」ってなっちゃうから。「まっ いっすよ~!」みたいな(笑)
吉:市場さんのほうも広告を取れば、なんかもう当たり障りの無い漫画になっていく(笑)
市:勿論やりますよ。これ、マジで思ってるよ。おれそれぐらいでいいっていうか、むしろそれぐらいが自分だって思っているのね。例えばさ、大御所というかどこか大きな所がね、”イチバさんの絵を使いたい”と。”そのかわり、こういう可愛いヤツかいてね” ってポーンと可愛いぬいぐるみみたいのを、いつもの子どもの絵を描く時のタッチで、血とか暴力は絶対止めてください”って言われたら、「はい!」って普通に言うね
ゆ:オカネの力
吉:っていうかそういうのに挑戦してみたいっていうのもあるんじゃないですか?
市:聞いて欲しいんだけど、それはそれでやるんだけど、他の物は自分で自費出版で作っているから、それは今まで通りにただ普通にやる。で、そこんときが次の問題なの!”そのかわり市場さん、1千万払いますけど、あなたが今個人で作っているようなああいう今まで通りのやつを描いてもらわれると印象が悪くなるから描かないでください”って言われた時に、おれどうすっかなぁ?だね。おれ、止めるかもしれない。言えば「そんなの絶対関係なく今まで通り描くぜ」って言えるんだけど、でもね、やめるんじゃなかなってドキドキするの。どういう意味かっていうと、あの多分これ裏返って本当のおれが出てくるんじゃないかって。本当はそれでいいんじゃないかって。金さえもらえばおれ充分なやつなんじゃないのかっていう、全部こう剥げ取られて、いや禿げてるけど(笑)、そういうのもちょっと興味ある
吉:ていうか、話があり得なさ過ぎて(笑)
市:は?言ったね、言ったね!よし見てろよ(笑)実はおれ計画してるんだよ
吉:1千万円計画?
吉:わかります
売れようが売れまいが、普遍的な怒りがあるんだよ
吉:おれ最近かなりその場の思いつきでばーっと言っちゃう
市:前は言った事には責任を持たなきゃとかどうしてもあったじゃない?それが歳と共に面倒くさくなってきたっていうのもあると思うのね
吉:でもさすがに最近は無責任過ぎるかなって、、自分で言った事覚えてないですもん
市:それ普通だと思うよ。あと、一つのことをずっとやってきてある程度の結果を得た人って、もう”これでいいじゃん”ってなっちゃうんだよね。だから変な自信、自信って言ったら大げさだけど、”こんなもんか”っていう、、本当にやったからね。っていう自負があるんだよ。だから、、
吉:別に最終的に自分一人になってもいいやぐらいの感じはあるし。その、いろいろと無責任な言動の結果として
市:だから一個の事をやってある程度評価を受けた人って、売れた売れないは別にして、自分の精神的な評価ね。”おれは望んでいたよりも大分受けてもらったっていうか、ただ遊びでやっているような、鼻くそほじりながらやっているようなことを評価してくれる、、鼻くそっていう語彙を使ってはいけないけれど、無理してそれをしているんじゃなくて、自分に素直にただやっていることでさ。まじそうじゃない?
意識していたらね、”そーら来たか”とか”お前ら遅過ぎる”とかなんかあるけど、本当は申し訳ないなと思うぐらいだよね。だって、何にも受けるような要素を出しているわけでもないしさ。自分の中で好きなことをやっているのを勝手に評価してもらえるっていう立場になったときの。例えば最初は一枚も売れなかったのにさ、一枚10万単位で売れることが現実に起きた時に、俺もう終わったんだよね、その画家人生が。ある意味ね。もっと高くできるじゃんっていう話もあるけどそれはあくまでビジネス的な感覚で、俺自身の目的はもう終わっちゃって、、っていうのはあるんだよ
吉:あとはもうルーティーンっていう感じで
市:そう。それで、一人の社会人だから”ああ、もうちょっとこうしたら売れるのかな”って。ただもう別の話。だって絵自体はもう描けてるし、いつだって描けるし。これだと語弊があるかな?もっと年取ると描けなくなるかもしれないよね。ただ、基本的には、なんでああいう同じようなテイストでやっていけるかっていうと、もの凄く怒りがあるのね。いくら金持ちになろうが、売れようが売れまいが、普遍的な怒りがあるんだよ俺。不条理とか、、人間が生きて行くことにおいて。”くそったれ感”って俺は読んでいるんだけど。それがある以上は、ずっとあの画風は変わらないし、あのテイストは誰にも出せないと思ってる
ブログのノイズ
吉:日本の一部のハーシュノイズに関しては、要は通り魔的なもんだと思ってるんですよ。欧米って、ノイズに意味を求めてくるんですよね。例えば宗教的/政治的なバックボーンがあって、かれこれこういう理由と思想でお前は作っているのか?と。でも日本人の出すハーシュサウンドって理由を超えた暴力とパワーと衝動性が混ざり合った賜物じゃないですか。もうホント通り魔でいきなり無差別に刺しまくっちゃったみたいな
市:ほうほうほう
吉:衝動的な。逆にそれが欧米人にとっては面白い。っていうかそういう感覚ってないと思うんですよ。何の理由もなく人を刺すっていう。向こうの無差別殺人はほとんどがカルトか政治的声明か、もしくはただの趣味ですし(笑)
市:それはね、俺も逆に自分の絵のほうで言うと全く一緒だと思う
吉:欧米人が日本のノイズを面白がる感覚ってそれじゃないかな。全く持って理解できない意味不明さが面白いという。いきなりなんであんな激しい音を叩きつける様に出すの、意味はなんなの、だけど無茶苦茶パワーあるし楽しいじゃん、みたいな。DOBUSU(*市場大介のソロノイズプロジェクト)のライブ最初見た時「あ、この人パンクだ」って思ったんですよ。要はインクを壁に叩き付けるような衝動的なパワーだけで強引に観客を引き込んで行くという
市:へえ。あれは初めてやって、しかも音がどんだけ出るのか分からなくてやってて。吉田さんなんかもっと大きな所でPA使ってという経験をしているじゃない?おれ分からなくて。おれはずっとバンドをやってたので、自分の表現方法はあったけど。。あのときはやっぱりまず音が大きくならなかったんだよあれ以上。思ったより下だったから強弱付けられなかった。マックスで出してもあれになっちゃったから。あ、その前に自分の家でやっているときの話が元だったんだけど、一曲の間になにかこう、強弱を付けて。。吉田さんて最後にワーッて叫ぶのがシメみたいのがあるじゃない?そういうのが自分の中にもあってさ。結局はここに来るために何をしているかみたいな。そういうドラマみたいなのが自分の中にあるんだよね。そういうのは割と日本人は考えやすいと思うんだけど。ヨーロッパの人たちは、、、あ、そもそもノイズの発祥というか、最初にそういうことやった人って、、ちょっと難しいかな、、
吉:切りないですよね、それ言い出しちゃったら
ゆ:ルイジ・ルッソロ?
吉:うーん、ただエンタテインメントじゃないんですよね。あくまでもコンセプチュアルな。アートだよね、要は。日本のノイズってやっぱりあくまでもノイズ・ミュージックだと思うんですよ。本当のノイズなんてやっぱ聞けないじゃないですか、、寝てる時に騒音で起こされるだとか。本当のノイズってただの不快感だと思うんですよ。だけど皆が「イエーイ」とか盛り上がったりとか好んで聞くノイズってやっぱり”ノイズ・ミュージック”
市:おれもねノイズについて思ったのは、だいたい同じなんだよね。でもなぜか聞けたり、興味深く音あるいは音楽として捉えようとするなら、それはプレイヤーの技量というか感覚のところだと思うんだけど、その時になんか途中でもうバッってすぐ別れる感じがするんだよね、”この人のは聞ける”とか”この人のはいいや”っていう。それをね、すごいと思ったんだよね。この人例えば変な音出したとしても、この人を信用しようとか、、そういう精神論みたいな音楽、、におれはそう感じたんだよね
吉:ノイズってやっぱり感覚的なものなんですよ。肌が合うかどうかっていう。例えば、普通の音楽みたいに歌詞でメッセージを伝えているわけではないし。感覚的に「今日の風は強いな」とか「今日は気持いいな」、、そういう感覚だと思うのね
ゆ:でも大勢が「今日は風が吹いて気持いいな」って言ってしまうと、、、
市:逆に演奏している側的には、みんなが「今日は気持いい」とか言い出すとちょっと捻くれて、もうなんか、そこにオナラして臭い匂いを混ぜてみたりだとかしたくなるんだよ。こんなことやるヤツらってみんなそうだよ。いや、ほんとに
吉:こんなことって(笑)
市:ほんとそうですよ。見ているとそういう人しかいないですよ
吉:確かに、妙に評価されるとちょっと捻くれたくなるんだよね
ゆ:また”そこがイイ!”とかいう人が出て来て、、
市:どうしようもなくなっちゃう
吉:このブログは別にノイズに関することだけなわけじゃないですよね
市:ノイズだよ(笑)
ゆ:ブログのノイズ(笑)
市:ノイズのブログだよ(笑)タイトルは吉田ノイズにしようか。吉田カバンみたいに(笑)
リハビリですよね?
吉:最近ライブよりもライブ終わった後の、ぐだぐだ喋っているときのほうが楽しい。打ち上げで、あまりにもしょうもないノリが(笑)
市:ノリようがないから
吉:”せっかく演奏良かったのに、酔っぱらうとみんなダメな人たちだなぁ”、みたいな(笑)
市:だってリズムないからね、ノイズは。人間は乗るからね、リズムでしょだって
吉:その中にグルーブを見出してこそ本当のアーティストなんですよ
市:いやいやいや、そこで外れてってるから(笑)やっぱり人間から外れて行っている特殊な人間たちだからさ
吉:ノイズ・ミュージックっていうのは体の細胞を喜ばせる、活性化させるための音楽なんですよ
ゆ:ノイズを聞き始めてから健康になった気がしますよ
市:どんだけベースが病んでるかってことでしょう?そうしないと分からないんだよ。おれね、ふつうの人間だからああいう絵を描いているんだからね
吉/ゆ:えー(笑)
市:だからあれで行けてるわけ
吉:自分の治療法じゃないんですかあれ?
ゆ:リハビリですよね?
